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今回から、著者ごとではなく、作品ごとに感想を書くことにしました。 何故なら、著者ごとだと長くなるから。 そんな訳で、今回は、最近読んだ田中芳樹訳の『隋唐演義』です。 これまた、あまり興味がある人が少なそうな本ですね〜(;^_^A ご存知の方もいるかもしれませんが、中国小説フリークの私の原点とも言うべき、田中芳樹氏。この人の作品を読んでから中国小説に興味を持ったようなものです。 何故、最近読んだのかというと、この小説は全5巻です。私は4巻まで持っていたのですが、何故か5巻をずーっと買ってなかったんですよ。 で、この前フラリと立ち寄ったブックオフで5巻を発見したので、買って来ました(笑)しかも、初版で前の人が読んだ形跡なし!新品同様です。 この小説は隋〜唐の時代の興亡を書いた本なんだけど、中国三大演義小説の中の一つです。他の二つは『封神演義』と『三国志』ですね。 『三国志』はおなじみですね。私はあんまり好きじゃないんだけど。登場人物が多すぎです。そんなことを言っていては、『水滸伝』は読めないけどね(笑) 『隋唐演義』は『封神演義』に比べて宝貝(ドラえもんの秘密道具みたいなもの)も出てこないし、『三国演義』みたいに男臭くないので、中国小説初心者でも非常に読みやすいと思います。 『隋唐演義』に出てくる有名な人といえば…煬帝(隋の皇帝)とかかな?小野妹子が持っていった国書に腹を立てた人物でしょ、確か。『日出るところの天子、日沈するところの天子に書を致す・・・云々』っていう文書で怒った人。この人が昏主(馬鹿天子)だったから、隋は滅びた訳ですね。巨大なハーレムを作ったり、お金をかけて首都を移したり。高句麗遠征とかね。 あとは、楊貴妃・武則天(則天武后)・秦淑宝(陳の皇帝の名前が陳淑宝なので、ちょっとややこしい・笑)・蔚遅景徳などなど。あ!日本でお馴染みの鐘鬼様(邪気を払う、守り神)の原型も出てきますよ♪ 数年前にディズニーが「ムーラン」っていう映画を作ったのを覚えてますかね?私は見てないんだけど、この映画の主人公のムーランこと「花木蘭」は、この隋の時代の人ですね。『隋唐演義』にもチラリと出てきます。この「花木蘭」という人は、結構面白いので、後日、違う本の紹介の時にゆっくりと。 そもそも、『隋唐演義』とはどのようなお話なのか。 魏晋南北朝時代の混乱を約300年ぶりに、文帝が統一し、隋時代が始まります。しかし、2代目・煬帝が国のお金を無駄遣いしたせいで、国が傾きます。そして、李淵(高宗)が反乱を起こし、隋を滅ぼして、唐王朝を築きます。唐王朝は300年近く続いた王朝なんですが、この『隋唐演義』では玄宗皇帝までを記録しています。玄宗皇帝といえば、かの有名な傾国の美女・楊貴妃を寵愛した皇帝ですね。玄宗皇帝の人生が終わる事で『隋唐演義』は完結します。ちなみに、知ってる人も多いと思いますが、楊貴妃はデブです。あと、楊貴妃は数人います。楊は苗字で、貴妃は位の名前なので、楊という苗字の貴妃は過去に数人いたんですね。確か3人だったような気がする。 『隋唐演義』は当時の中国の死後の世界感や、宗教観が垣間見えてなかなか面白いです。 中国では死後は死者の世界で生活すると考えられていて、死者の世界のお役所で働いたりするんですね(日本の小野篁が昼は朝廷に仕えて、夜は六波羅蜜時の井戸を通って黄泉の国の役人をしていたみたいな感じ)。死んだ後に良い役職に着きたいから、生きているうちに鬼卒(死後の世界の役人)に賄賂を贈るとかいう話もあります。 昔の中国人の信仰の根底には泰山信仰(泰山という山に死者の世界があって、死ぬと泰山に魂が飛んで行くと考えられていた)とか道教があったけど、唐代にもなると仏教が混じってくるので輪廻転生の観念が出てきます。『隋唐演義』の隋の煬帝は武則天に生まれ変わったという事になっています。輪廻転生という考え方が定着した後も、死後の世界観も健在で、中国の根源的な信仰と、インド仏教が見事な融合を果たしています。非常に興味深い。 私は中国仏教とか神仙思想が好きなので、『隋唐演義』はこれらの観点からも非常に楽しめる作品でした。 |